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友の会専用ページ 2022年2月

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ふなばし三番瀬環境学習館 友の会専用ページ 2月号

浮島現象(下位蜃気楼)について

皆さんは「浮島現象」という言葉をご存じでしょうか?

水平線上に遠くの島影や船などが空中に浮いて見える現象のことで、「蜃気楼(しんきろう)」と呼ばれる気象現象の一種です。

蜃気楼と聞くと、なんとなく大砂漠の地平線に浮かぶオアシスの幻……といったイメージがありますが、実は意外と身近なもので、三番瀬干潟からもよく見られます。

三番瀬では、海の水と大気の温度差が大きい秋から初春にかけてがもっとも多く、また風が穏やかで空気の澄んだ晴れた朝に現れやすいようです。

下の写真は2018年の12月8日、環境学習館の屋上から撮影した浮島現象の様子です。
この日の船橋は、朝8時の時点で8.1度と、前日より一度ほど冷え込み、天気は薄曇りで、風は北の風で1.5メートル/秒ほどの微風でした。

海面に浮かび上がって見える海ほたるパーキングエリア
海面に浮かび上がって見える海ほたるパーキングエリア
海面に浮かび上がって見える房総半島と貨物船
海面に浮かび上がって見える房総半島と貨物船

では、この浮島現象が発生する理由をお話ししましょう。

まず、海の水は大気より温まりにくく冷えにくいため、冬の朝には海水の温度が上空の大気よりかなり暖かくなります。
(海水温20度前後に対して気温は10度以下)

暖かい海の水は水面に近い大気を暖め、また風も弱いので、海上の大気はかき混ぜられることもなく、下の方が暖かく、上空に行くに従って温度が低いという状態になります。

このような状態の時、温度差のある空気の層は大きく光を屈折させます。また、温度差が大きいほど屈折率も高くなります。

そのため、下図のように、背の高い船のマストなど、温度の低い空気に包まれた部分の景色は下向きに大きく曲がって見る人の目に届き、海面に近い部分の景色はそれほど曲がらずに目に届くので、目に映る像は実際の風景が上下反転したようになります。

もちろん、そのまままっすぐ届く光もありますから、二つの像が鏡写しのように重なり合い、海面に浮かび上がったように見える、というわけです。

浮島現象(下位蜃気楼)図解
浮島現象(下位蜃気楼)図解

もう一度浮島現象の写真をよく見ると、宇宙船のように見える海ほたるパーキングエリアの上下に出っ張りが見えます。

海面に浮かび上がって見える海ほたるパーキングエリア
海面に浮かび上がって見える海ほたるパーキングエリア
海ほたるパーキングエリア
海ほたるパーキングエリア

アップの写真と見比べてみると、海ほたる最上階のアンテナ部分が上下鏡写しになっている物だとわかりますね。

なお、蜃気楼には、今回ご紹介した浮島現象や真夏のアスファルトの上で見られる逃げ水のような「下位蜃気楼」と、実際の風景が上下に引き延ばされたり風景の上側に逆さ写しの幻が見える「上位蜃気楼」があり、全国的によく見られる下位蜃気楼に対して、上位蜃気楼は日本中探してもごく限られた場所でしか発生しません。有名なのは日本海側の富山湾の魚津沖や琵琶湖などです。

冬の朝三番瀬にお越しの際は、沖の風景にも注目してみましょう。

三番瀬ナウ
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