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友の会専用ページ 2022年1月

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ふなばし三番瀬環境学習館 友の会専用ページ 1月号

三番瀬の二枚貝に関する小ネタ3連発!

新年、あけましておめでとうございます! 環境学習館の小澤です。
1月号とは言え旧年中の公開ですので、2021年中に読んでしまった方は年が明けてからもう一度お読みください。

さて、みなさんはどのような元旦を過ごしますか? 私は毎年、ふなばし三番瀬海浜公園の浜辺で初日の出を眺めて新年を迎えます。ただし、なぜか毎年曇っていてあまり見えていません(2021年は寝坊しました)。

三番瀬から見た2019年の初日の出
2019年の初日の出
三番瀬から見た2020年の初日の出
2020年の初日の出(曇り)

初日の出を眺めてからでも楽しいのが、浜辺のビーチコーミングです。ここ最近は、面白い二枚貝がたくさん見つかります。今回は、私が12月中に見つけた、ちょっと面白い二枚貝を紹介しましょう。

船橋名物、あの貝の秘密を紹介!

殻の成長線に沿って盛り上がりが何条も走っている、白い二枚貝
①この貝は何でしょう
①に似ているが、殻に茶色い模様がある二枚貝
②この貝は何でしょう

まずはこの2種の貝がら、何という貝かわかりますか? どちらも幅1cmほどの、小さな二枚貝です。成長線が盛り上がっているのが特徴的ですね。左の貝は白く、右の貝には模様があります。

左の貝がらは、なんと船橋名物ホンビノスガイのものです。大きくなったホンビノスガイはこのような成長線はなく、見た目はずいぶん異なります。しかし、実は大きなホンビノスガイにも殻の頂点の部分にはこのような成長線の盛り上がりが見られることがあります。二枚貝の貝がらは外に外に大きく形作られていくので、小さかったころの名残りとして、この盛り上がりが残っているのです。

そして右の貝がらは、なんとこちらも船橋名物ホンビノスガイ。まるでハマグリのような模様が入っているので、一見するとホンビノスガイには見えません。ホンビノスガイには、小さいうちは貝がらにこのように模様のあるものや、貝がらの内側が紫色一色のものもあるようです。レアなホンビノスガイを拾えたらとってもラッキー! 今年一年、いいことがありそう!

大きなホンビノスガイの頂点
大きく成長したホンビノスガイの頂点
成長線の盛り上がりが見られる
内側が紫色の小さなホンビノスガイ
内側が紫色のホンビノスガイ

マテガイ大量漂着の原因を解明したい!

さて、続いては11月10日頃から大量に打ち上げられているマテガイの貝がら。風や波の影響か、東側の堤防に大量に打ち上げられているようです。
「海に何かあったんですか?」という質問をたくさんいただきましたが、近くの海が酸素不足になっている様子はありませんでした。
さて、いったいどうしてマテガイの貝がらが大量に流れ着いたのか。その答えは、じっくり観察することで明らかになりました。
貝がらの中に、なんと生きたフジツボがついていたものがあったのです。

海岸に漂着した大量のマテガイ
11月11日に漂着したマテガイ
フジツボがついたマテガイの殻
12月4日に採集したマテガイに付着したフジツボ

殻の幅が1cmに満たないこのフジツボは、大きさから推定すると6~7月に生まれ、7~8月にマテガイに付着したものだと考えられます。マテガイは砂の中で暮らしているため、普通生きているときにはフジツボはつきません。つまり基質となったマテガイは、7~8月には既に死んでしまっていたものだということです。2021年の7~8月には青潮が頻繁に発生し、マテガイをはじめ、アカエイや他の魚がたくさん死着しました。
あのときのマテガイの殻はいつしか見えなくなっていました。私の想像ですが、おそらく台風による風や高潮によって沖に運ばれ、どこかにひっかかっていたのでしょう。それが11月9日の豪雨や強風によって再び打ち寄せられたものだと考えられます。
付着していたフジツボの一つを調べたところ、和名をサンカクフジツボと言い、低潮線下、つまり潮が引いても水の中にあるようなところの、貝がらやブイなどに多くみられるそうです。このフジツボの生態も、マテガイがどこかに引っかかっていたという考えを裏付けるものとなりました。

11月に再び流れ着いたマテガイはとてもきれいで、一見すると4か月近く経過しているとは思えません。貝がらのもつ耐久力には、まったく驚きです。

上から見たサンカクフジツボ
殻口が△なのでサンカクフジツボ
黒くて小さな、あの貝の殻
見覚えのある黒い貝……?

シジミ漂着! あれ?誤解かも?

最後に紹介するのは、こちらの黒い貝がら。これは、ヤマトシジミの貝がらです。普段我々がお味噌汁などで食用としている、ごくごく普通のシジミです。今までほとんど見たことがなかったのですが、2021年はなぜかたくさん拾えました。

ヤマトシジミは江戸川放水路や旧江戸川には生息しているのですが、三番瀬の干潟では見たことがありません。貝がらがこれだけ流れ着いているのは、ひょっとしてどこかに定着したのかも?
そんな想像とともに、時折二枚貝が好む場所を掘ってみて何となく探しているのですが、一向に見つかりません。もっとちゃんと探さなくてはダメなのかな。そんな風に考えていたときでした。

海岸に集まって落ちているシジミの貝がら
12月2日、ヤマトシジミいっぱい発見
シジミのアッププ写真
すべて食べごろのいい大きさ

12月2日、スロープを降りてすぐの場所で、まとまった大量のヤマトシジミを見つけました。うーん、なんとも不自然……。誰かがお味噌汁を食べて、貝がらを捨てたのかな? そんな風に想像される打ちあがり方です。

三番瀬海浜公園は誰でも入れる場所ですので、人為的な漂着物も多く見つかります。時には、寒い地域でとれるホタテの貝がらや南国原産の貝がらが見つかることも。見つけたものを鵜呑みにしてはいけない、と改めて知ったのでした。



さて、今回は最近拾った貝について考察してみました。浜辺で拾えるものは、毎日ちがいます。ぜひ、みなさんもビーチコーミングをしてみてください。そして、珍しいものを見つけたら環境学習館に自慢しに来てください。お待ちしています!

参考文献:
日本付着生物学会 (2017) 新・付着生物研究法. 恒星社厚生閣.
西村三郎 (1995) 原色検索日本海岸動物図鑑Ⅱ. 保育社.
東京都内湾漁業環境整備協会 (2016) 新江戸前の貝図録. 東京都内湾漁業環境整備協会.
塚本博一 (1990) タテジマフジツボの飼育下における成長. 付着生物研究 8.

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