ここから本文です

友の会専用ページ 2021年11月

  • トップ
  • 友の会専用ページ 2021年11月

ふなばし三番瀬環境学習館 友の会専用ページ 11月号

冬の干潟でヤドカリ探し!

こんにちは、環境学習館スタッフの大瀧です。

冬が近づき、肌寒く感じる日が多くなりましたね。最近は朝なかなか布団から出られなくて困っています。そんな今年の冬、私にはひそかに楽しみにしていることがあります。それは……ヤドカリ探しです!
実は昨年2020年の冬、干潟では珍しい種類のヤドカリが見つかったのですが、なんと、調べた限りでは、ふなばし三番瀬海浜公園では初めて確認された種類でした。たまたま観察できただけなのか、それとも三番瀬の干潟にもすんでいるのか。その手がかりを探しに行きたいと思っています。

そこで今回は、三番瀬の干潟で比較的かんたんに観察できるヤドカリ2種と、三番瀬では昨年初めて見つかったヤドカリ2種をご紹介します。みなさんも冬の干潟遊びにぜひ探してみてください。


①ユビナガホンヤドカリ(レア度:★)
ヤドカリをつかまえてよく観察すると、一番前のあしがハサミになっていることがわかります。左右一対のハサミのうち、右側のハサミの方が大きいのが「ホンヤドカリ」のなかまです。中でも少しあしが長いのがユビナガホンヤドカリの特徴です。三番瀬では一年を通してよく観察できます。
特に冬から春にかけては恋のシーズン! 体の大きなオスが、小さなメスが入っている貝がらを左のハサミでつかんで一緒に歩く姿が見られるかもしれません。これは「交尾前ガード」という行動で、オスが気に入ったメスを他のオスにとられないようにしているのです。
潮だまりの中や、干潟の砂浜に近いところで巻貝の貝がらを探してみましょう。中をのぞくと隠れているかもしれませんよ。

水槽の中のユビナガホンヤドカリ
ユビナガホンヤドカリ
正面から見たユビナガホンヤドカリ
右のハサミの方が大きく、触角はしましま。

②テナガツノヤドカリ(レア度:★★)
ユビナガホンヤドカリの中にたまにまざっているのを見かけます。砂にもぐって隠れる習性があるため探しにくいかもしれません。
左右一対のハサミのうち、左側のハサミの方が大きいので、ユビナガホンヤドカリと一緒にいても見分けることができます。羽毛のようなフサフサした触角を水中でふり回し、エサとなる水中の栄養をあつめて食べます。ユビナガホンヤドカリの近くや、潮だまりの中を探してみましょう。

正面から見たテナガツノヤドカリ
テナガツノヤドカリは左のハサミの方が大きい
テナガツノヤドカリの触角
フサフサした触角でエサをあつめます

③ホンヤドカリ(レア度:★★★) ※超レア!
右側のハサミの方が大きく、あしとハサミの先に白いラインが入っているのが特徴です。ユビナガホンヤドカリと比べるとあしが短いため、一緒に観察すると違いがわかりやすいと思います。
本来は磯に近い環境で見られる種類で、岩のすき間や転石の下などに隠れていることが多いのですが、三番瀬では昨年、中央スロープ付近の潮だまりの中で見つかりました。潮だまりの中やゴツゴツした岩の近くをそっとのぞいてみましょう。

水槽の中のホンヤドカリ
ホンヤドカリ。あしとハサミの先には白いラインが!
正面から見たホンヤドカリ
あしの長さは短め。触角はしましま

④ヨモギホンヤドカリ(レア度:★★★) ※超レア!
赤い触角がトレードマーク。あしとハサミの先が薄いオレンジ色で、その上に黒いラインが入っています。こちらも本来は磯に近い環境の転石帯にくらす種類ですが、昨年は三番瀬でも確認されました。
ヨモギホンヤドカリは、夏の間岩場の奥深くでじっとしているためなかなか出会えず、活動を再開した冬から春にかけてが観察シーズンです。岩の近くや海藻の下をそっとのぞいて、ヤドカリと出会えたら触角の色に注目して観察してみましょう。

正面から見たヨモギホンヤドカリ
ヨモギホンヤドカリ。触角がきれいな赤色をしています
水槽の中のヨモギホンヤドカリ
あしとハサミの先が薄いオレンジ色。 その上には黒いラインも見えます

干潟には冷たい風を遮るものがないのでとても寒いです。けして無理はせず、暖かい格好をして行きましょう。冬の風の冷たさや潮のにおい、鳥たちの鳴き声、砂の踏み心地などを感じながら、また新しい発見をしていただけたら嬉しいです。

もし、気になるヤドカリを見つけたら教えてください。特に超レアな2種に出会えたらぜひ! 暖かい学習館の観察コーナーで一緒に観察しましょう。
観察コーナーには貝がらの標本がたくさんあるので、ヤドカリたちが使っている貝がらも一緒に調べてみるとおもしろいと思います。寒くてなかなか動きにくい季節ですが、一緒にヤドカリ探しを楽しみましょう!


【参考】
・小島早智, 石原千晶, 和田哲 (2016) ヨモギホンヤドカリの交尾前ガードペアにみられる同類交配と闘争経験に基づいたオスの配偶者選択. CANCER, 25.
・三島伸治 (1997) ヨモギホンヤドカリを和白干潟で採集. CANCER, 6.
・三宅貞祥 (1982) 原色日本大型甲殻類図鑑Ⅰ. 保育社.

三番瀬ナウ
ページトップへ