友の会専用ページ 2021年4月
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ふなばし三番瀬環境学習館 友の会専用ページ 4月号
穴の科学の裏側をのぞく!
みなさんこんにちは、環境学習館の小澤です。3/14(日)、日本テレビ「所さんの目がテン!」にて当館や公園の干潟が紹介されました。今回の友の会専用ページでは、そのときに放送されなかった裏話をしたいと思います。
当館が取材のお話をいただいたのは1月のことでした。
「目がテン!」番組スタッフの方から、「穴の科学を取り上げたい、東京湾でニホンスナモグリを案内できる方を探している」というお電話をいただいたのです。
ニホンスナモグリは、当館のワークショップ「三番瀬探検隊―干潟の生きものを探そう―」に参加したことがある方であれば一度は見たことがあるであろう生きもので、何とも頼りない柔らかい殻をもつエビのなかまです。コメツキガニやシオフキと並ぶ、三番瀬常連ズの一角と言えるでしょう。
そんなニホンスナモグリであれば、ご案内はたやすいことです。しかも「所さんの目がテン!」といえば、全国ネット! これは学習館のPRをする、またとないチャンス!
昨夏に放送されたテレビ朝日「じゅん散歩」では、放送直後に来館者が急増しました。コロナ禍で入館者が伸びず苦しい思いをしていた当館にとってはとても嬉しいことで、テレビの訴求力をひしひしと感じました。
科学コミュニケーターであるとともに広報担当でもある小澤としては、ぜひとも実現したい案件です。すぐに打ち合わせに入りました。
先方のお話では、「身近な穴を科学したい」とのこと。(ニホンスナモグリなんて絶対に身近ではない、とか思ってもけっして口には出さず)少しでも長い時間映してもらうべく「他の生きものの巣穴も紹介できますよ」などと追加の提案をたくさんするのでした。
ちなみに、なぜニホンスナモグリの取材で当館に連絡したのか尋ねたところ、Googleで検索をかけたとのことでした。試しに実際にGoogleで「ニホンスナモグリ」と検索をかけると、なんと2件目が当館の「三番瀬図鑑」でした。図鑑を作ってよかった!
「企画が通ったらご連絡しますので」というスタッフさんの言葉にハラハラしながら待つこと数日、ついに折り返しの電話が来ました。ですが、スタッフさんは開口一番、
「ニホンスナモグリの巣穴の型をとりたい」というのです。
確かにテレビ映えするかもしれないけれど……。これは大変な案件です。干潟表面にできる野鳥の足跡ならいざ知らず、巣穴の標本を採るには流し込む石膏の濃度の微妙な調整が必要です。そしてこの時点では巣穴標本は初チャレンジだったのです。すぐにテレワーク中の標本担当、薄井に連絡しました。
薄井はこともなげに「できると思う、参考文献は集めてたし」と言ってくれたのです。とても頼もしい! さっそく、過去に鳥の足跡標本をとったときの石膏の在庫を確認し、薄井と巣穴標本採集テストの日程決めをしました。
よしよし、これでもう大丈夫。あとは先方の電話を待つばかり……。そして数日後、とうとう折り返しの電話が来ました。ですが、スタッフさんは開口一番、
「貝に穴をあけるツメタガイを紹介したい」というのです。
ツメタガイと言えば、アサリの殻などに穴をあけて中の肉を食べてしまう巻き貝のなかまです。「いやいや無理を言いなさんな、ツメタガイが見られるのは春だから、2月の干潟では見られませんよ」と以前の私なら言ったことでしょう。しかしこのときの私は違いました。なにせつい先日、たまたま別件の対応で行った夜間の採集で、ツメタガイのなかまである大量のサキグロタマツメタを見たばかりだったのです。潮位から考えても、夜の採集ならばサキグロタマツメタに会える可能性は高いと思いました。
こうしたやりとりが実を結び、「所さんの目がテン! 穴の科学」の企画は無事に通り、取材クルーが入ることになったのでした。
こうした迎えた撮影本番。
まずは干潟で見られる巣穴探しです。ニホンスナモグリだけでなく、さまざまな生きものの巣穴を探すことになりました。放送されたのはアナジャコ、ニホンスナモグリ、コメツキガニだけでしたが、ほかにオサガニやゴカイのなかまなどの巣穴も見られたほか、スナモグリの巣穴に共生するハゼやテッポウエビなども紹介しました。
(使われなかったけど)
レアだけど、小さくて地味でテレビ映えはしない
そして巣穴標本採集。テストでは小さな巣穴標本しかとれなかったのですが、そこはさすがの標本担当、当日はかなり巨大な巣穴標本を採集することができました。石膏を流してしまうと巣穴の主であるニホンスナモグリまで固めてしまう可能性が高いのですが、このときのニホンスナモグリはよほど器用だったのか、無事にどこかに逃れることができたようです。命を奪わずにすみ、こちらも安堵しました。
ちなみに、放送では掘り出すシーンは数秒でさらっと流れていましたが、小澤・薄井で深さ1m、直径1.5mほどの穴を30分以上かけて掘りました。穴の標本を見失っては大変ですから、慎重に慎重に、砂を水で流しつつ掘っていきますが、何せ干潟ですから、穴を掘るそばから水を含んだ砂がどんどん崩れてくるのです。しかも、午前の撮影に時間をかけすぎたのか、じょじょに潮が満ちてくる!
時間制限がある中の作業は、肉体的にも精神的にもなかなかに骨が折れました。
目印のわりばしには「スナモ1」と書かれている
実際は大人の肩から指の先までの深さ
L字に折れ曲がっているのがわかる
いくつもの部屋に分かれ、複雑な形をしている
夜間のサキグロタマツメタ採集では、レポーターの渡辺裕太さんも本当にどんな生きものをつかまえるのか伝えられていませんした。「サキグロタマツメタ」という得体のしれない名前に恐れおののく渡辺さんの姿を見て、私もつい面白がって「酸と歯をつかって、硬い貝の殻に穴をあける肉食の動物です」「表面はぬるっとしていて、ゆっくりと歩き回ります」と、間違っていないけど……的な情報をたくさん差し上げました。
おっかなびっくり干潟を探す渡辺さんでしたが、いっしょに探す私の方は内心もっとドキドキです。なにせ、見つからなかったら「探したけれど、ツメタガイは見つかりませんでした」で放送されてしまうかもしれません。そして私は、重度の鳥目なのです。目を皿のようにしてがんばって探したところ、砂地に不自然な盛り上がりが! ややっ、これだ!「見つけた!」と叫ぶと、すぐにカメラマンさんが近づいてきてくれました。
意外に20分ほどで見つけることができました。その後も、渡辺さんが「面白い、自分も探したい!」と楽しみながら探してくださったり、カメラの前で潮位について話したりしていたら、あっという間に深夜になってしまいました。ちなみに、渡辺さんご自身でも2匹のサキグロタマツメタ(交尾中?)を発見されました。たくさんのサキグロタマツメタを採集し、後日渡辺さんがご自身で美味しく調理して召し上がるところまでが、学習館での撮影でした。
私は調理の時にも立ち会っていましたが、貝アレルギーの小澤ではまったく力になれませんでした。
というわけで、15分ほどだった放送の裏側をご紹介いたしました。我々としてもたくさんの知見を得ることができ、とても有意義な取材だったと思います。
また当館が放送される際には、ツイッターなどで告知いたします! ぜひフォローしてくださいね!






