友の会専用ページ 2021年3月
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ふなばし三番瀬環境学習館 友の会専用ページ 3月号
ダイヤモンド富士
日食とは、地上から見て太陽が月の影に隠れる現象を指します。中でも皆既日食は、太陽が完全に月に覆い隠されて見えなくなる現象を言い、次に日本国内で観測できるのは2030年の6月、北海道での事となります。また、皆既日食の始まる直前と終わった直後、太陽を覆い隠す月面の縁部分の凸凹から太陽光線の最後の一片がまばゆく漏れ出て、ダイヤモンドの反射光のようにキラリと輝く(ように見える)現象を「ダイヤモンドリング」現象と呼びます。
富士山の山頂もその稜線がギザギザになっており、朝日が富士山のかげから出る瞬間、あるいは夕日が富士山のかげに完全に隠れる瞬間、まばゆく輝くことが知られており、皆既日食時のダイヤモンドリング現象になぞらえて「ダイヤモンド富士」と呼ぶようになりました。
もともとの意味では朝日や夕日の一片が富士山頂からキラリと輝くその瞬間を指すのでしょうが、今ではもっと幅広く、「富士山の山頂に朝日や夕日が接する」事をダイヤモンド富士と呼ぶことが多いようです。
ふなばし三番瀬海浜公園とその周辺は、国土交通省が選定した「関東の富士見百景」に選定されており、毎年2月の14日ごろと10月の27日ごろ(年によって数日前後します)には多くの写真愛好家がここ三番瀬の海岸に訪れ、美しくライトアップされた葛西の観覧車越しにダイヤモンド富士の眺めを楽しんでいます。
ですが、あいにく今年2021年2月14日のダイヤモンド富士は富士山にガスがかかってしまい、三番瀬からはきれいに見えませんでした。
「え? 知らなかった。もう、秋までダイヤモンド富士は見られないの?」 そう思われたあなた、あきらめてしまうのはまだ早いですよ。 実は、ダイヤモンド富士がみられるのは何もここ三番瀬だけではありません。富士山が望める場所で、沈む太陽の通り道と皆さんを結ぶ直線上に富士山の山頂が位置すればいいわけです。別の言い方をすれば、日の入りの時点で富士山の山頂の影が伸びた場所でダイヤモンド富士が見られるわけです。ですから、天候その他の理由で三番瀬の冬のダイヤモンド富士を見逃してしまった時には、翌日、翌々日と、少しずつ南側に観測場所をずらしながらチャレンジしてみてください。
例えば、新習志野駅から1キロほど海沿いの茜浜緑道の岸壁では2月16日ごろ、千葉市の千葉ポートタワーでは2月25日ごろ、東京湾アクアライン木更津金田インターそばの海岸では3月14日ごろ、富津市の富津岬の先端では3月30日ごろと、房総半島を南に下るほどダイヤモンド富士がみられる時期は遅くなります。
房総半島の南端、館山市の布良海岸付近が千葉県内でダイヤモンド富士を見られる南限になります。日付は最も遅く、なんと6月5日ごろとなります。また同時に、秋のダイヤモンド富士が最も早くみられる場所でもあり、その日付はまだ梅雨も明けきらない7月7日ごろです。
一方、秋のダイヤモンド富士は三番瀬では10月27日ごろですが、先ほど紹介した富津岬では9月13日ごろ、金田インター近くの海岸では9月28日ごろ、千葉ポートタワーでは10月16日ごろ、茜浜緑道では10月25日ごろ、と、今度は北上するにつれて次第に遅くなります。
ちなみに、千葉県内で最も遅く秋のダイヤモンド富士が観測できる北限は、東武アーバンパークライン運河駅から利根運河沿いに西に歩いて江戸川にぶつかるあたりで、日付は12月16日ごろとなります。この場所はまだ年を越さない12月27日ごろには早くも春のダイヤモンド富士を見ることができる場所でもあります。
ところで、季節によって、ダイヤモンド富士を見ることができる場所が南北に大きく移動するのはどうしてでしょう? 実は、これには太陽の動きが関係しています。
太陽は、季節によって日の出日の入りの位置が異なります。冬の太陽は真東より南寄りの地平線から顔を出し、南の空低くを通って真西より南の地平線に沈みます。一方、夏の太陽は真東よりずっと北寄りの地平線から上り、空高くを通過して真西よりずっと北寄りの地平線に沈みます。
日の入りの位置幅は真西を中心にして南北におよそ30度ずつ変化します。夏は太陽が北にずれるので富士山の影は逆に南方向に動き、6月21日の夏至の日に最も北に達します、秋から冬にかけては南にずれるので富士山の影は次第に北に動き、12月22日の冬至の日に北端に達するというわけです。
千葉県は南北に長く、また富士山の見える方向に東京湾や関東平野が広がって富士山がとても見やすいおかげで、ダイヤモンド富士の見られる計算上の北限と南限どちらもギリギリの場所でダイヤモンド富士を眺めるチャンスがあるのです。
なお、ダイヤモンド富士は肉眼でも観測できますが、長時間眺めていると目を悪くします。またスマホのカメラなどではとても小さく写り、肉眼で見る印象よりかなり残念な写真になってしまいます。できればカメラはミラーレスカメラや一眼レフなどを使い、焦点距離300~500ミリの超望遠レンズと三脚があると大迫力のダイヤモンド富士を撮影できるでしょう。
最後にお役立ち情報を一つ。「スーパー地形」というスマホアプリを使うと、任意の日付、任意の位置からの富士山の見え方や、太陽の沈む時間と位置を確認できます。有料のアプリですが5日間の試用ができますので、ご興味のある方はぜひお試しください。
※参考サイト
国土交通省関東地方整備局「関東の冨士見百景」案内サイト
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/yoko/2021/rekiyou212.html
国立天文台令和3年(2021)歴要項
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/yoko/2021/rekiyou212.html