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友の会専用ページ 2021年2月

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ふなばし三番瀬環境学習館 友の会専用ページ 2月号

オンデマンドワークショップ「ちびっこ生きものおはなし会」シリーズ誕生までのドタバタ話

みなさんこんにちは。植物ワークショップ担当の鷹野です。
緊急事態宣言が再び発出されて、当館も再び臨時休館となりました。職員も出勤は最低人数、テレワークでの業務を続けております。2020年の春の際は、書類整理や事務書類の作成が中心で、みなさんにお会いできない日々が続きましたが、今回はオンライン、オンデマンドのワークショップがあります。みなさんに楽しいコンテンツをお届けしようと、臨時休館中も大忙しです!
今回はオンデマンドワークショップ「ちびっこ生きものおはなし会」シリーズ誕生までのドタバタを紹介します。

オンライン、オンデマンドのワークショップを始めよう!

2020年春、学校の一斉臨時休業が行われた際、ネット上ではおうち時間を楽しむためのさまざまなコンテンツが公開され、著名人が行う読み聞かせ動画が話題となっていました。
そのころ当館では、オンデマンドのワークショップを検討中で、小さなお子さま向けのオンデマンドワークショップとして、読み聞かせ動画を作ってはどうか? と案が持ち上がりました。題して、「さばかんチャンネル・ちびっこ生きものおはなし会」シリーズです。担当となった私は一抹の不安を覚えつつ、タイトルはどう転んでもいいように抽象的な「草花」にしておこう! と、見切り発車をしました。新しいワークショップを企画するときは、いつもこんな調子です。

絵本読み聞かせ動画の配信には、著作権という大きな壁が待ち受けていた!

さて、当時はブームとなっていた読み聞かせ動画の配信ですが、大きな話題になるにつれ、「著作権を侵害しているのではないか」という問題も指摘され、絵本をつくっている出版社も、注意喚起を行っていました。やっぱり難しいのでは…と不安になっていると、なんと、1社だけ、「〇〇出版の絵本の読み聞かせ動画を配信したい場合は、ご相談ください」と書いている出版社があるではないですか!私はわらをもつかむ思いで、利用申請のファックスを送りました。
ファックスを送り、あ〜よかった〜とお茶一口飲んだところで、電話がなりました。「ファックスを寄せていただいた絵本の読み聞かせ動画配信ですが、基本的にお断りしています」取りつく島もありません。企画は暗礁に乗りあげたのでした。

違う方法を考えよう!

頭を切り替えて、まったく違うアプローチを検討しました。アマチュアの絵本作家さんにオリジナルの絵本を書いてもらう? 知り合いの作家さんにお願いする? ……かんかんがくがく、その辺にいる職員を捕まえてはアイデアを話したり考えてもらったりしました。
そして、ある日ふと思いつくのです。「そうだ、青空文庫に掲載されている作品をつかったらどうだろう!? 青空文庫に載っているのは文章のみだけど、写真と組み合わせれば成立するのでは?」青空文庫とは、著作権の消滅した作品を電子化して集めているサイトです。ここに掲載されている著作権の消滅した作品ならば、著作権のハードルはクリアです! こうしてこのシリーズは、「著作権の消滅した童話と、写真を組み合わせた読み聞かせ動画」となったのでした。

どんな作品を選ぼう? どうやって船橋と関連づける?

そうと決まれば、早速童話を選びます。新しいシリーズだし、有名な作家さんがいいでしょう。よし、宮沢賢治にしよう。 あっ、イチョウの話があるぞ! 秋だしちょうどいいや。こんな調子で、とんとん拍子に作品は宮澤賢治の童話「いちょうの実」に決まりました。
さて、童話が決まって、次に考えなくてはいけないのは、どうやって環境学習館がある船橋や三番瀬と関連づけるかです。
三番瀬にはイチョウの木は生えていないしなぁ〜と海浜公園内をウロウロしていると、以前イチョウの「から」を浜辺で見つけたことを思い出しました。あれはきっと川を流れてきたんだろうな〜。そうだ、川の近くに生えているイチョウの巨木を探してみよう。と思いついてからは、まるで連想ゲームのようにとんとんとアイディアが繋がっていきます。 御滝不動尊に大きなイチョウの木があるみたいだ。御滝不動尊は海老川の源流のひとつで、海老川の河口は三番瀬のすぐ近くだ。ぴったりだ! こうして、童話を読んだ後は海老川をつながりに三番瀬とイチョウの話をする流れとなったのでした。

スライド1枚目「タイトル」
動画内では当館オリジナルキャラクターさばかんくんが大活躍
お話に登場するのは? お母さん・お父さん
クイズも盛り込みました
ギンナンに目とまゆげ
朗読中はいちょうの実の写真に顔をつけるなど、楽しく見られる工夫をしました
三番瀬の東側に河口が位置する海老川の地図
海老川もばっちり紹介!

作りながら、改めて宮沢賢治のすごさを実感

方針が決まったら、早速動画作りです。音声の収録、イチョウの写真の収集……もっと抑揚をつけて! と注文が入ったり字幕つけるならとルビを振ったり、様々な意見を交わしながらようやく動画が完成しました。
動画を作りながら実感したのは、宮沢賢治の植物への造詣の深さです。童話「いちょうの実」では、登場人物であるいちょうの実たちが、2人ずつで会話をしています。
ここで植物の話をします。イチョウの雌花には柄の先に種子となる部分(胚珠)が2個ついていて、胚珠がふくらみ、秋にはいわゆる銀杏となります。つまり、イチョウの実は短い枝に2つずつつきます。

胚珠が2つついたイチョウの雌花
イチョウの雌花(福岡教育大学HPより)
2つならんだイチョウの実
イチョウの実(福岡教育大学HPより)

宮沢賢治はそれを知っていて、2人ずつの会話形式でお話を構成したのでしょう。有名な作家にしようと宮沢賢治を選んだのですが、結果的にとてもいいものになりました。一点惜しかったのは、タイトルは「さばかんチャンネル ちびっこ生きものおはなし会『草花』」ですが、イチョウは草花というより樹木と言った方がしっくりくるところですね。でもイチョウの花の話は動画内でしているので、セーフとしましょう。
こうしてドタバタと完成した「ちびっこ生きものおはなし会」シリーズのワークショップは、3月にも開催予定です。みなさんもぜひご覧になってください。さばかんチャンネルでお待ちしています!

参考文献

三番瀬ナウ
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