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友の会専用ページ 2020年12月

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ふなばし三番瀬環境学習館 友の会専用ページ 12月号

生きもの飼育は試行錯誤

皆さま、初めまして!環境学習館スタッフの宮腰です。
こちらのページを書くのは初めてですが。すでにお会いしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
私は船橋育ちで、今年の3月に専門学校を卒業し、4月から当館のアテンダントをさせていただいていますが、実は環境学習館ができるより前、10年以上前から海浜公園に遊びに来ていました。専門学校では水生生物の飼育を学んできて、今は当館の水槽管理、飼育を担当しています。
今月の21日からは企画展が始まり、水槽展示もこれまでとは一味違ったものとなっていますので、ご来館いただいた際にはぜひご覧になっていってくださいね!

今回、飼育担当の私からは、環境学習館での飼育展示で大変だったこと、そしてそれを解決した方法などについて少しお話しさせていただきたいと思います。
当館で展示している生きものは、基本的にはスタッフが自ら採集してきています。皆さまもご存じの通り、すぐそばには広い干潟がありますから、行こうと思えばすぐにでもフィールドに出ることができることが利点ですね。
ところがここでまずひとつ問題が起こります。三番瀬干潟には様々な生きものがいますが、特定の種類を狙うとなかなか見つからないことがあるのです。
最近これで困ったのがマゴチという平たくて砂によく似た色をした底生の肉食魚です。環境学習館としての知見や私個人の採集経験から、こうすれば採れるだろうという予測は立てられます。しかし相手は生きもので、絶対ということはありませんから、今年に限ってはタモ網を持って干潟を歩き回ってもなかなか見つけることができずにいました。そこで私たちは、採集方法を変えることにしました。当館は毎年千葉県から許可を得て地引網調査をしていて、そこにマゴチが入ってくれることを期待して網を引いてみました。すると見事に展示用として丁度良い大きさの個体を採ることができました!
地引網の使用は漁業権などの関係でいつでもできることではありませんが、採集方法を変えてみるとあっさり見つかることもあるので、試してみる価値は大いにあると思います。場所を変えてみるのもひとつの手ですね。


マゴチの写真
マゴチ
引いた網から生きものを取り出す様子
引いた網から生きものを取り出す

さて、そうして採集してきた生きものの健康状態のチェックや水合わせをした後、水槽に入れていくのですが、これまで野生で生きてきた生きものですから、当然人には馴れていません。種類にもよりますが、成長した個体ほど馴れにくく、展示水槽に入れても物陰に隠れて見えないことや、特に魚などでは餌を食べないということも多々あります。特に餌に関しては、食べてくれないとどんどんやせ細って死んでしまいますから。何とかして餌付けして食べてもらわなければいけません。
餌の事で工夫が必要だったのは、先ほども登場したマゴチです。マゴチは、ふつう砂の中から眼だけを出し、近づいてくる獲物を待ち伏せします。動いているものに反応するので、最初は人工餌料や冷凍した小魚を餌と認識してくれませんでした。そこで最初のころは生きている餌を与えます。ニホンスナモグリやゴカイ、ヨコエビなど、干潟や他の水槽から確保した小さな生きものを与えると、よく食べてくれました。
ここでもうひとつ気を付けることとして、わざとヒトの姿が見える状態で餌を入れることです。こうすることでヒトという大きな生きものが目の前にいることに馴らすこと、ヒトが来ると餌が食べられると認識させることができるのです。
ここまできたら、焦らずにゆっくりと冷凍餌などに変えていきます。餌を細い針金などの先端につけて動かしてあげるとより確実に食べるようになると思います。その結果、今ではスタッフが近づくと上の方まで泳いできて、餌を落としただけで食べてくれるようになっています!


ニホンスナモグリを食べるマゴチ
ニホンスナモグリを食べるマゴチ
近づくと頭を上げて餌を待つマゴチ
近づくと頭を上げて餌を待つ

マゴチはこのように時間をかけて馴らしていく必要がありましたが、同じ肉食魚でもホウボウなどは比較的すぐに様々な餌を食べるようになりましたし、ハゼの仲間やカニなどには、水槽に入れた直後からなんでも食べるようなものも多くいます。種類によって、個体によっても違ってくるので、その時に最適な方法を考えるのが良いでしょう。
ここまで、順調に進めてきたかのように書いていますが、当館でも日々試行錯誤の連続です。私自身、元はどちらかというと淡水が専門ですから、わからないことだらけです。他の飼育担当スタッフとも協力しながら、三番瀬ならではの水槽展示をしていきたいなと思っています。ご感想等もぜひお聞かせください!

三番瀬ナウ
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